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おタクの恋 ブログ版 10-10 [小説]

10-10

 彼の下着は大きく突っ張っている。
 二人は抱き合ってキスをする。
《怒張》
《硬くなったものが彼女の体にふれる》
《俺より大きい》
《俺と同じくらい》
《俺は勝ったと思う》
《僕はむけてることがうらやましい》
《彼女に見せろ》
《彼女に握らせろ》
《私は握るのが好き》
《私は嫌い》
《私はどっちでもない》
《私は見たことも握ったこともないけど見てみたい》
《晶、立派になったのう》
《彼女が舌を》《舌をからませて》《まじりあう唾液》
 彼は彼女の下着に手を当てる。
 柔らかな感触が彼の指先に伝わる。
《この感じ》
《濡れている》《感じているんだ》《彼女は感じている》
《いいな。いいな。いいな》
《でも少しこわいのよ》《でも体験したいの》
《私は痛かった》
《私はそれほどじゃなかった》
《私はまだバージン》
「明かりを消して」
 彼は照明を落とす。
 暗闇の中で彼女の下着を取り去る。
 彼女の体に手を伸ばす。
《私の方が毛が薄い》
《私の方が毛が濃い》
《私と同じくらい》
《どんな形なのか》
《見たい》
《見てみたい》
《クリトリス》
《日焼けの跡がまだ》
《夏休み、楽しかったね》
 彼も下着を脱ぐ。
《いよいよ》
《クライマックス》
《コンドームを忘れてはいけない》《いらないんじゃないの》
《最初は生で》《その方が》《神聖な感じ》
《外で出せばいい》《危険》《平気。ぬかりない基礎体温表》《彼女もパラノイア》

 それまで我慢に我慢を重ねていた疑似人格・夏沢慧がトラメガを片手に立ち上がった。

《みなさーん、お静かにしてください。二人はこれからいいところなんです》

 疑似人格たちはいっせいにシュンとした。
 彼は静かに彼女に身を重ねた。
「愛してる」
「愛してる」
 彼は彼女の肩を押さえ、一挙に身を沈める。
「あ」
「う」
 彼は彼女の中にあった。
 破瓜の痛みはかすかな脈動となって彼女から彼へと伝わる。
 二人はお互いのぬくもりを愛しく感じながらもっとそれを確かめようとお互いを抱き締める腕に力をいれる。
 すべての行為を終えて二人はうつ伏せになって肩を並べた。
 二人は見つめ合う。
 夏沢慧がささやくように海宮に尋ねる。
「先輩は将来何になるつもりなんですか」
 海宮は即座に答える。
「君を妻に持つ私立探偵」
 夏沢慧はクスリと笑った。
「私、何もかも見抜いていて事件を未然に防ぐ人が好きです。だけど」
「だけど?」
「少しは見て見ぬふりして事件を成長させてやるべきです」
「どうして?」
「その方が儲かります」
 海宮はしばらく考えて質問する。
「君はそういうタイプの医者になるのかい?」

(おタクの恋2 学園祭の女王殺人事件につづく)


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おタクの恋 ブログ版 10-9 [小説]

10-9

白い下着に包まれた豊かなバストが全員の視線にさらされる。
《キレイ》
《でかいな》
《形がいい》
《予想以上》
《お兄ちゃんってエッチ》
《ねえ、優ちゃん、俺たちもそろそろどう?》
《あ、影山、ホントに海宮の妹とつきあってるのか?》
《お前、年上願望はどうなったんだ?》
《結局、あれだよ、セックスに対する自信の無さが原因だからさ》
《和泉重子とやりまくって解消しちゃったのかあ?》
《ケッ、底の浅い奴》
《顔がイイからしょうがないのよ》
《屈折が甘くなるんだよな》
 海宮の手が伸びて夏沢慧の体からブラジャーを取り外す。
 夏沢慧はまっすぐ海宮の瞳を見つめ、かすかに震える。
《乳首がキレイ》
《ピンク色だ》
《いや、あれはピンクじゃなくてカーマイン・レッドに艶消しのホワイトを混ぜブラック・イエローを少々だ》
《形がかわいい》
《乳輪と乳頭のバランスがいい》
《あたしの方がツンとしてる》
《私の方が丸い》
《ワタシの方が色がいい》
《口にふくめば?》《しゃぶれば?》《舌の先で転がせば?》《早く早く》
 彼はベッドにもたれた彼女の乳房に顔を近づける。
 彼女がかすれた声で言う。
「恥ずかしい」
 胸に顔を埋めた彼の頭を彼女が両手でそっと抱く。
《温もりだ》
《無垢か、無垢なのか?》
《かすかな塩分》
《シャワーもあびないで》
《そんな必要ない》《彼女の分泌物なら》《ウンコでもきれい》《踏まれたい》
《変態》
《乳首が硬くなってきた》《感じているのか》《彼女が感じている》
《アタシも乳首は弱い》
《私はそれほどでもない》
《オレだって乳首は感じるぞ》
《海宮のアソコが》《はちきれそうだ》《あせるな》《あせってはいけない》
《思い出すなあ》
《ねえ》
《バブバブ》
「先輩」
 彼女に呼ばれて彼は顔をあげる。
 二人の目が合う。
「せつない感じです」
 彼が掠れた声で言う。
「ベッドへ」
 二人はもつれあうようにベッドの上にはい上がる。
 着ているものを脱ぐ。
 二人は最後の下着だけになった。

(つづき)→http://blog.so-net.ne.jp/kid-blog/2007-07-22


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おタクの恋 ブログ版 10-8 [小説]

10-8

 夜道に満月が輝いている。
 夜の東京は秋の冷気の中。
 その片隅を少年と少女が歩いて行く。
 藤井アリスのバースデー・パーティーは終わり、それぞれが帰路についた。
 海宮はあれ以来すっかりパーティーの常連と化している夏沢慧を送って海砂町までやってきたのだ。
 海宮の額の傷はすっかり癒えて傷痕もほとんど目立たない。
「先輩、背が伸びましたね」
「うん」
 海宮は身長一七八センチになっていた。
 しかしそういう夏沢慧も身長一六二センチになっている。
 二人は最初の出会いから仲良く三センチずつ成長したのだ。
「すっかり、遅くなっちゃったね。慧ちゃんのお父さんにおこられそうだ」
 夏沢慧は目に悪戯っ子の光を湛えて呟く。
「あのね。先輩、今日、父は出張なんです」
「へえ」
 疑似人格・夏沢父が少し怒ったように言う。
《岐阜へ。一泊するんだ》
 彼女は急に思いついたように言った。
「先輩、ちょっと寄ってきませんか」
 疑似人格・大嶺が二人の間から顔を出した。
《高校生らしい節度ある交際をだね》
 疑似人格・アリスが背後から両手でその口を塞ぐ。
《オーミネ、かたいよ》
「どうぞ」
「お邪魔します」
 海宮は夏沢慧の家の匂いに懐かしさを感じる。
「兄もいなくって」
「へえ」
 疑似人格・夏沢兄が恋人の肩を抱いて言う。
《ハハハ。彼女と北海道へ旅行中だよ》
「コーヒー飲みますか」
「サンキュー」
 お湯が沸き、彼女はカップとポットを持って海宮を促す。
「あの、ちょっと恥ずかしいけど、こっちが私の部屋なんです」
 夏沢慧の部屋のドアを開けると黒猫が飛び出した。
 夏沢が猫の名前を告げている。
 黒猫はニヤリと笑うとキッチンの方へ去った。
 海宮は彼女のいれてくれたコーヒーを飲む。
 彼女はCDラジカセのスイッチをオンにする。
《据え膳ね。これはもう据え膳状態ね》
 疑似人格・藤井アリスが囃し立てた。
《バージンだもんなあ。負けるよなあ》
 疑似人格・極楽寺夕香がくやしそうに言った。
 彼と彼女はコーヒーを飲み終わりキスをしていた。
 彼と彼女の心臓は激しく脈打っていた。
 彼の手が彼女の胸を軽く押さえた。
 その手の上に彼女の手がそっと重なった。
「君の胸が見たい」
《何が君の胸が見たいだよ》
 疑似人格・大嶺康生が口をとがらせた。
《じゃ、お前は見るな》
 疑似人格・浅生恭子が素っ気なく言った。
《見ます。見ます》
 夏沢慧はコクリと頷くとシャツのボタンに手をかける。

(つづき)→http://blog.so-net.ne.jp/kid-blog/2007-07-21


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おタクの恋 ブログ版 10-7 [小説]

10-7

 海宮は夜の東京を走り抜け、藤井のマンションの前でバイクを停め、見慣れたマンションの入り口をぼんやりと眺めた。
 大嶺たちはすでに部屋にあがったようだ。
 海宮は単車を駐車場に置いてマンションに入った。
 エレベーターのドアが開くと疑似人格・和泉重子が黒いドレスを着て立っていた。
《結局、あんた、死にたかったんだな》
《まあ、異常性格者が自己を貫くのは何かと大変なのよ》
《あんたが言うと実感あるね》
《ふつうの人間は世界に合わせて自分を変える。私は世界を変えることにした》
《あんたは異端すぎるよ》
《そうでもないと思うけど》
《原爆で東京都民全員と心中しようなんてふつうは考えません》
《一人では死んでいけないものよ》
《一人では生きていけないの間違いじゃないの?》
《死なばもろともの私。邪魔者は消せというあなた。それほどの差はないわ》
《‥‥‥議論は今度にしないか? 俺はフラフラだ》
 疑似人格・和泉重子は不満そうに唇を歪めるとエレベーターの床に吸い込まれた。
 海宮が部屋のドアを開けるとカレーの匂いがした。
 大昔のロック・ミュージカルのサウンド・トラックが薄いBGMになっている。
 部屋の中にはクラスメートが顔をそろえていた。
 海宮は室内にたちこめた強烈な自我の匂いに目眩を感じる。
「ウミちゃん、遅かったじゃないか?」
 ソファを半分占領した大男の大嶺がリンゴの皮を軍用ナイフで器用に剥きながら陽気な声で言った。
 テーブルには裸のリンゴが山と積まれている。
 その横で浅生恭子が本を読んでいた。
 その後ろには片瀬弓江、馬場冴子、中根孝平、沢崎拓也などが床に寝そべって大画面でビデオを眺めている。
「なんだ。パーティーか?」
「いいや、打ち合わせだよ」
「打ち合わせ?」
「水城夫妻の入籍記念パーティーだよ。ウミちゃん仲人するんだろう。でも打ち合わせの前にメシにしようってことになってさ。アリスたちはカレーつくってんの。俺はデザートのフルーツの係」
 そう言いながら大嶺はナイフを置き無造作に立ち上がった。
 大嶺の向かいのソファに腰を降ろし背を向けていた沢崎が振り返った。
 その目が見開かれる。
「ウミちゃん、血が」
 海宮は額に手をやった。
 手にはべっとりと赤いものがついていた。
 そのとき、夏沢慧がカレー用の大皿を十枚ほど抱えてキッチンから部屋へ入って来た。
 彼女は海宮の顔を見て、驚きを表すために皿を落としそうになったが、あやうく抱きとめて海宮に駆け寄って来た。
 彼女は慎重にテーブルの上に皿を置いてから海宮の額に両手を差し伸べた。
「先輩、どうしたんですか?」
 海宮は即座に答えた。
「玄関で転んだ」
 夏沢慧は海宮の首を掴むと頭を引き下げ強引に傷口をのぞきこんだ。
「あ、たいしたことないみたい」
「そう」
「でも消毒しなきゃ、藤井先輩、救急セットありますかあ?」
 そう言いながら夏沢は部屋の隅の電話を目指して歩き出した。
 キッチンから鍋を持った名取宏とサラダ・ボールを持った藤井アリス、そしてスプーンを束ねた極楽寺夕香が現れた。
 極楽寺は海宮の顔を見て満足そうな顔した。
「ほうら、血まみれだ」
 海宮は卒倒した。
 大量の血液が失われていたからだ。
 その体を大嶺が受け止める。
 同級生たちが海宮に駆け寄る中で夏沢慧は冷静に救急車を呼ぶために受話器に手を伸ばした。
 彼女は傷口を一目見たときから海宮の生命の危機を悟っていた。
「あの、転倒した場所に鋭利な刃物があったみたいで、かなり失血してるんですが、住所は‥‥‥」
《ほら、先輩。私も意外とやるでしょ》
 闇へと流れ込む意識の中で疑似人格・夏沢慧が囁いた。

(つづき)→http://blog.so-net.ne.jp/kid-blog/2007-07-19


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おタクの恋 ブログ版 10-6 [小説]

10-6

「海宮、俺はお前のことを誤解してたよ」
「‥‥‥」
「友達だけど普通のつまんない奴だと思ってた」
 大嶺が拳銃の指紋を拭いながら言う。
「影山、そりゃお前の人を見る目が甘いからさ」
「へえ、じゃ大嶺、お前は知ってたの?」
「ウミちゃんが変な奴だってのは一目で分かるさ」
「どうして?」
「異常な自分が気にならなくなるからさ」
「ふん」
「影山、お前はノーマルだから、分からないのさ。ウミちゃんのアブノーマルな部分が」 
 海宮が口を挟む。
「おいおい、黙って聞いてると俺は変態か?」
「違うの?」
「お前たちの仲の良さは分かったよ」
 影山はふてくされたように言った。
 海宮は影山の顔にわだかまりを見いだした。
 その瞬間、海宮は疑似人格・浅生恭子に肩をたたかれ、意識支配を交替した。
 海宮は呟くように言う。
「影山、なかったことにしようぜ」
「え?」
「お前は和泉重子なんて女とは会わなかったんだ」
「彼女と会わなかった?」
「ロケットを打ち上げたり、爆弾を仕掛けたりしなかったんだ」
 大嶺が目を見開いた。
「影山、お前、そんなことしてたの?」
「‥‥‥」
「なあ、そうしようよ」
「そういうわけにはいかないだろう」
 影山の頑固な口調に大嶺が顔をしかめた。
「ほら。そういうところがノーマルなんだよ」
「なあ、影山。女で失敗するなんて青春時代にはよくあることさ。ヤクだって今ならやめられる」
 大嶺がまた目を見開いた。
「え、お前、ヤクもやってたの?」
「俺はさ」
 影山はゆっくりと足を踏み出した。
「この女を愛してたんだ」
「本当に年上の女が好きなやつだなあ」
「それをお前が殺しちゃった」
 大嶺が口を挟む。
「やったのは俺だ」
 海宮は影山の目を見つめながら言う。
「だからどうするっての?」
「俺は」
 影山の視線がさまよい砂川の死体の握る拳銃で止まった。
 大嶺の顔に困惑が浮かぶ。
「復讐の鬼と化して俺たちを殺すのか?」
「俺は」
 大嶺が少し焦った口調で言う。
「影山、死んだ女と生きてる友達、どっちが大切なんだ」
「俺は」
 海宮が二人の間に割って入った。
「あのさ、影山、俺の妹、知ってるだろ」
「優ちゃんか?」
「あいつ、お前のファンなんだ」
 影山の目がふと拳銃から離れた。
「なるほど。だから俺を助けたのか」
「良かったら一度、デートしてくれないか」
「俺、年下の女の子は」
「でも意外と大人だぜ」
「そうかあ?」
「あ、実の兄の言葉を疑うの?」
「ふーん、優ちゃんねえ」
「なあ、だからなかったことにしようよ」
「本当に? 妹、紹介してくれんの?」
「するって。それどころか兄として頼んでんの」
「じゃ、しょうがないな。なかったことにするよ」
 大嶺が大きく息を吐いた。
「どうなることかと思ったぜ」
 海宮が影山の肩を抱いて言った。
「さあ、帰ろう」
 三人の高校生は何事もなかったような顔で部屋を出た。
 大嶺の車を海宮の単車が追走する。

(つづき)→http://blog.so-net.ne.jp/kid-blog/2007-07-18


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おタクの恋 ブログ版 10-5 [小説]

10-5

 意外に遠くで銃声がした。
 轟音とともにふっとんだのは重子の体だった。
 裸の胸に穴が開き血が吹き出している。 
 海宮が振り仰ぐとそこに大嶺が立っていた。
「しっかりしろよ、ウミちゃん」
「オーちゃん。どうしてここに来たの?」
「影山をたたき起こして場所を聞き出した」
 海宮は硬直した全身からようやく力を抜いた。
 そして立ち上がった。
 大嶺が海宮を支えながら呆れたように言う。
「おい、この女、まだ生きてるぜ」
「タフだな」
 重子は目の前に立つ海宮を無言で見つめていた。
 その目には海宮の予想に反し、憎悪は無かった。
 重子は口を開いて、不明瞭な音声を発した。
 何かの呪文のような言葉の羅列だった。 
「最終目標」「原爆」「ミス」「セックス」「自由」「私」
「呪縛」「破壊」「ラッキー」「寂しくない」「私」
「崩壊」
「全員死亡」「満足」「分解」「死ぬ」
「みんな」「マインド・コントロール」「束縛」「核分裂」「自己破壊衝動」
「エクスタシー」「男」「誰」「天敵」「自然」「邪魔」「支配」「奴隷」
「高層ビル」「夏の終わり」「夕焼け」
「東京」「火の海」「失敗」「残念」「私」
 和泉重子の目がガラス玉と化した。
 大嶺が重子の手首をとった。
「ご臨終だ」
「ハイ・スピードの効き目が切れたんだろう」
「ハイスピード?」
「強力な覚醒剤」
「ふーん」
「それとも出血多量かな?」
「おそらく両方だろう」
「‥‥‥シュールな遺言だったな」
「ウミちゃん、お前も血が出てるぜ」
「かすっただけだ。それよりも助けてくれてありがとう」
「そんな。照れるじゃねえか」
「命の恩人だ。感謝の言葉もない。必ずいつかこの恩に報いるよ」
「‥‥‥ウミちゃん、ふざけてるな」
「あ、分かった?」
「拳銃はどうする?」
「捨てておくさ」
「急がないと」
「警察が来るかも」
 海宮と大嶺は監視カメラを破壊し、二人がここにいた証拠を隠滅する作業に入った。
 マンションの窓にはベイ・サイドの夜景が広がっていた。
 誰かが部屋に入って来た。
 ほとんど同時に海宮と大嶺は人の気配に気付いて動きを停めた。
「殺しちゃったのか?」
 二人が振り返ると影山が入り口に立っていた。
 大嶺は海宮を見た。
 海宮は影山を見つめて言う。
「殺さないと俺が殺されそうだったんだ」
 影山は肩をすくめる。
「じゃ、しょうがないか」
 影山は和泉重子の死体を見下ろした。
 そして虚ろな口調で言う。
「海宮、いつから知ってたんだ?」
「何を?」
「俺の遊びをさ」
「ついこの間」
 影山は視線を海宮にゆっくりと移した。

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おタクの恋 ブログ版 10-4 [小説]

10-4

 重子は拳銃を拾いあげ、無造作に引き金を絞り、弾丸が尽きているのを悟ると表情も変えずに砂山の握るリボルバーへと向かっていった。
 海宮は重子が弾丸の尽きた自動拳銃のために無駄にした時間の分だけ立ち直り、右手で腰から戦闘用ナイフを抜きながら、左手で重子の足首を払った。
 足をとられ、床に倒れた重子は拳銃を諦め、近距離にあった砂山の戦闘用ナイフを手にした。
 そして素早く立ち上がる。
 海宮はダメージから完全に回復したわけではなかったがその重子の動きに応じて身構える。
 二人の握っているナイフは米軍の既製品でまったく同じものだった。
 手に入れたルートも同じだったのだ。
 二人はナイフを持って対峙した。
 重子の背後の床には砂川の死体があり、海宮の背後には中藤の死体があった。
 死体はどちらもリボルバーを握っており、海宮と重子はシンメトリーな状況の中で動きを止めている。
「あなたが謎の敵だったのね」
 海宮は無言だった。
 海宮はさきほどのキックの威力から重子の格闘技の実力も並々ならぬことを感じとっていた。
 会話に応じれば自分に隙が生じる予感があった。
「なぜ、私の邪魔をするの?」
 重子はさらに誘いをかけた。
 海宮は会話の誘惑に耐え兼ねて、じりじりと後退した。
 一歩でナイフが届かぬ距離へと身を移そうとする。
 重子は油断なくその動きを見つめている。
《危険だ。ウミちゃん、受け身になってる》
 疑似人格・大嶺の忠告と同時に重子が弾丸のように突進して来た。
 重子のナイフが海宮の顔面を襲う。
 海宮は辛うじてその一撃を避け、重子の腹部にナイフをつき立てた。
 海宮は背後からナイフが来る気配に重子の裸の腹部からナイフを抜き出しながら身を床に投げ出した。 
 海宮の背中につきたてるつもりのナイフを勢い余って自分の胸につきたてた重子は腹部から激しく出血しながら、胸のナイフはそのままに中藤のリボルバーを狙いに行った。
《ヤクでハイになってんだ。痛覚が麻痺してやがる》
 海宮の額からは血が流れ出していた。
 重子の最初のナイフの一撃を完全にかわせなかったのだ。
 海宮は頭部の痛みに耐えながら重子を狙ってナイフを投げた。
 宙を飛んだナイフは重子の背中に突き刺さったが、何も感じない様子で彼女はリボルバーへと足を進める。
 重子の後ろ姿を見つめて海宮は思わず声に出した。
「ゾンビだ」
 前後にナイフを刺したまま重子は中藤のリボルバーに手を伸ばした。
 海宮は恐怖感で意識が遠のくのを感じた。
 疑似人格・大嶺が叫ぶ。
《ウミちゃん》
 海宮は気力をふりしぼり必死に砂川の死体から拳銃を奪い取ろうとした。
 重子は白い体の腹から胸からそして口元から赤い血をダラダラと流しながら拳銃を構える。
「死ね」
 銃声と同時に海宮は頭に衝撃を感じた。重子の放った銃弾は海宮の頭をかすめて飛んだ。その衝撃波で海宮はうつ伏せに倒れた。
 重子がゆらりと立ち上がった。
「ハズレ」
 銃口が倒れた海宮に接近してくる。
「今度はハズレないように」
 身を起こそうとする海宮の動きはワン・テンポ遅れをとった。
 銃口の熱気が海宮の後頭部に感じられる。
 海宮の頭の中に重子の冷笑が浮かんだ。
 海宮は思わず目を閉じた。

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おタクの恋 ブログ版 10-3 [小説]

10-3

 単車を飛ばす海宮は和泉重子たちの脱出ルートをたどっていた。
 背後から疑似人格・大嶺が耳元で囁く。
《検問があったらたらやばいぜ。ウミちゃんも拳銃不法所持してるし》
《大丈夫だ。奴らの後をたどって行けば‥‥‥》
《なるほど、ガマガエルが安全な道をチョイスしてくれるわけだ》
 海宮の背後で疑似人格・大嶺の巨体が疑似人格・角田の巨体にスライドする。
《ボクがあっさり死ぬとは思わなかったな》
《ラッキーだったのさ》
《どうせなら肉弾戦でやりたかったな》
《いや、その場合は君に勝てるやつなんていないよ》
《ハハハ。そうかね》
《うん》
 海宮の背後に疑似人格の気配は消えた。

 東京に夜が降りて幻想的なイルミネーションがベイ・エリアを支配していた。
 テレビではすでに事件の報道特別番組が組まれていた。
 現場からは最初「運送中の核燃料を過激派が襲撃」と報告があった。
 しかし、担当官僚がマスコミ上層部に介入し、続々と現場に駆け付けたマスコミ関係者が世の中に伝えることは「自衛隊車両、過激派に襲われる」に変形し「巻き添えで一般市民に死傷者」「付近をパトロール中の警察官も死亡」「無差別テロに死者38名・海外派兵への行き過ぎ抗議行動」へと発展していった。
 血でぬかるむ運転席でその臭気に耐えながら、派遣された自衛隊員が核燃料輸送トラックを安全地帯に避難させたことは黙殺された。
 事件から「狙われたプルトニウム」は削除されたらしい。
 海宮は606号室のテレビから漏れる「核燃料」の「かの字」もないニュースにしばらく耳を傾けていた。
 アジトのマンションのエレベーター・ホールだった。
 疑似人格・大嶺が606号室を睨んで言った。
《帰ってきているな》
《三人ともいる》
《脱出準備をしているようだ》
 海宮は足を踏み出した。
《おそらく第二のアジトがあるんだ》
《そうだろう》
 海宮は密輸拳銃を取り出した。
《やるなら今だ》
《そうしよう》
 海宮は606号室の扉を開けた。
 最初に目に飛び込んだのはダンボール箱に荷物を詰め込んでいる放火魔・中藤だった。
 彼は突然の闖入者に唖然とした。
 それからダンボール箱の中に手をつっこんだ。
 海宮は構えた自動拳銃から二発撃ち、二発目の弾丸は中藤の額に穴を開けた。
 中藤は声も立てず、ダブル・アクション式のリボルバーを握り締めたままのけぞるようにぶったおれた。
 海宮は奥へと無造作に進んだ。
 左の肩を弾丸がかすめ、海宮は反射的に身を沈めながら無作為に発砲した。
 一発。
 二発。
 三発。
 重い物が倒れる音がした。
 砂川は壁にもたれて息絶えていた。
 海宮の視線はベッド・ルームへと移った。
 ベッド・ルームの扉は開かれ、ベッドの前には下着姿の和泉重子が佇んでいた。
 その手にはヘア・ブラシが握られていた。
《もう拳銃に弾丸がないぜ、ウミちゃん》
《うん》
 重子は氷の眼差しで海宮を見つめていた。
「あなたは誰?」
「動くな」
 海宮は空の拳銃を構えて一歩前へ踏み出した。
「あなたを見たことがあるわ」
 海宮はさらに踏み出した。
「そうだ。貴子の同級生じゃないの?」
 類い希な記憶力と認識力の持ち主だった。
 美貌と最高の知性を兼備するスーパー・ウーマンだ。
《だが狂ってる》
 手を伸ばせば届く距離に重子が迫った時、強烈なキックが繰り出された。
 重子はヒールの低い靴が海宮の急所に炸裂する。
 海宮は下腹部の痛みに目の前に火花を散らせ、自動拳銃を取り落とした。

(つづき)→http://blog.so-net.ne.jp/kid-blog/2007-07-15


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おタクの恋 ブログ版 10-2 [小説]

10-2

 海宮はアリスを促して車道へ飛び出した。
 通りを渡る途中で二人に気付いた大嶺が立ち上がる。
 輸送トラックの運転席は血だらけだった。 
 放火魔・中藤が黒いドイツ車に乗り込むと彼らはUターンして現場から離脱していく。 
 敵の動きを見定めて大嶺が叫ぶ。
「ウミちゃん、こっちも撤退だ。警察が来たら面倒だろ?」
「そりゃそうだ。オーちゃん、車は?」
「そこの角に停めてある」
「じゃ、エンジンかけて待ってて。俺はみんなを呼んでくる」
 海宮は短機関銃を投げ捨て地下鉄の出口に向かおうとすると両側から影山を支えた極楽寺と夏沢慧が姿を現した。
 極楽寺が大嶺に影山をパスしながら平然と言う。
「そろそろ片付いたころだと思ったの」
《こいつもまともじゃなかったな》
「うわー、これどうなってんですか。早く救急車呼ばないと」
《夏沢慧、まともなのは君だけだ》
 サイレンの音が接近する。
 大嶺が影山を抱きながらあわてて言う。
「やばい。逃げよう」
 夏沢慧が海宮を見つめて尋ねる。
「どうして?」
 大嶺が海宮の代わりに答える。
「法治国家はいろいろと面倒だからさ」
 すでに周囲は夕闇に包まれていた。
 あちこちのビルの窓からこちらを窺う視線が感じられる。
「俺はバイクだからアリスの家でおちあおう」
「彼女はどうする?」
 大嶺が歩き出しながら言った。
「オーちゃんが一緒に乗せてってくれ」
「ええー? 藤井さんちに行くんですかあ?」
「ここにいると警察に事情を聞かれてまずいんだ」
「どうして?」
「夏沢さん、何も聞かずに行ってくれないか」
「それって先輩を信じろってことですね?」
「うん」
「私行きます」
「じゃ、急いで」
 クラスメートたちはどやどやと大嶺の4WDに乗り込む。
 助手席に気絶し続ける影山が放り込まれた。
 現場へ向かう救急車やパトカーとすれちがいながら海宮たちは現場を脱出した。
 三分ほど走り、ようやく落ち着きを取り戻した車内では極楽寺が自慢気に言った。
「ほら、当たったでしょ?」
「え?」
 リアシートで極楽寺とアリスにはさまれて小さくなっている夏沢慧が首を傾げた。
「海宮と影山の銃撃戦」
 極楽寺はアリスに向かって首を伸ばす。
「でもさあ。血まみれになるんじゃなかったの?」
「そういえばそうね」
「二人ともピンピンしてるよ」
「これからなるのかも」
「あのう。なんの話ですか?」
 両サイドの上級生二人のやりとりに夏沢慧はおずおずと口をはさむ。
「いや、何でもないの」
「‥‥‥あのう。海宮先輩のバイク、どっかいっちゃったんですけど」
「え?」
「‥‥‥本当だ。さっきまで後ろを走ってたのに」
「血まみれになりに行ったのかな」
「え?」

(つづき)→http://blog.so-net.ne.jp/kid-blog/2007-07-14


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おタクの恋 ブログ版 10-1 [小説]

10-1

 改札口付近は血の匂いに満ちていた。
 直撃を浴びたばらばらの体が飛び散り、爆砕した破片で負傷した人々が喘いでいる。
「やっぱり本物は悲惨だねえ。ひどいことすんのね」
 アリスはそう言いながらキョロキョロしている。
 大嶺が出口に視線を注ぎながら言う。
「どうする?」
「反対側の出口の側にやつらのトラックが停めてあるんだ」
「ふん?」
「そいつを爆破しちゃう」
「なるほど」
「その隙にテロリストのでっかい方は相当危険だからオーちゃんがやっつけて」
「ということは俺は最初の出口から出るわけだな」
「さすがオーちゃん」
「‥‥‥ウミちゃん、何だか状況に詳しいね?」
「その疑問にはカタがついたら答えるよ」
 三人は一気に階段を駆け上がった。
 海宮が地下鉄出口の側面の壁から顔をのぞかせると放火魔が通りを渡って来るのが目に入った。
 問題のトラックを始動させるためだ。
 ゴリラ男はプルトニウムの輸送トラックの横で銃を構えている。
 テロリストの用意したトラックは出口の五メートルほど右側にあった。
「あのトラック?」
 海宮の背後で手榴弾を構えたアリスが聞いた。
「そう」
「じゃ」
「せえので?」
「オーケー」
「せえのっ!」
 手榴弾がトラックの下を転がり、海宮と藤井は身を伏せた。
 トラックは爆発で浮かび上がり横転するとガソリンに引火して炎上した。
 アリスが目を輝かす。
「すごーい」
 それを合図に半壊したもう一つの地下鉄の出口から大嶺が飛び出した。
 ゴリラ男の背後から大嶺は正確に一連射を放った。
 不意をつかれたゴリラ男は踊りを披露して血まみれとなり仰向けに倒れた。
 彼の胸と腹は半分消えていた。鍛え上げた肉体も機関銃弾の前には脆かった。
 放火魔が振り返った時には大嶺は遮蔽物に姿を隠している。
 疑似人格・大嶺が納得したように言った。
《さすがは俺本人だな。あのゴリラを一撃だ》
《普通じゃないと思ってたけど、オーちゃんも神経が一本切れてたな。ああも冷静に人が殺せるなんて》
「大嶺、やるじゃん」
 様子を窺っていたアリスが口笛を吹いた。
 海宮はチラリとアリスの横顔を見る。
《こいつもまともとはいえないよなあ》
 放火魔・中藤が叫んでいる。

[こちらセンター、アントラーがやられた。機関銃弾でボロボロだ。積み替え予定のトラックも爆破された]
[こちらサンド・ボックス、敵は誰だ]
[敵は不明。こちらから姿が見えない]
[こちらサンド・ボックス。作戦を中止する。センターは武器を捨て撤退せよ]
[こちらセンター、了解]

 立て続けに銃声が聞こえた。

[こちらセンター、撤退する]

(つづき)→http://blog.so-net.ne.jp/kid-blog/2007-07-13


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